アゲハの羽化、そして・・・

無反応の物体と化した蛹カプセルは、撫でてもつまんでも、何の反応もない。蛹になったばかりの頃の薄緑と黄色の美しい表面は、乾ききって灰色に変わり、糸で枝にひっかけた姿は、ぶらぶらと揺られたまま。生きている証もない。そんな蛹の期間は、予想よりも長かった。

この中に無事に命があるのかどうかは“その日”が来るまでわからない。なにせ、蛹の中では、全く目的が異なる体に生まれ変わるための大改造として、細胞の死と生成とが同時進行しているというのだから。こちらも小さな物体の中の不思議を、外からそっと励ますしかない。


蛹化してから10日程経ったころ、からからに乾いた尾の部分が、一瞬、ムクンムクンと動いた!まるごと硬化していると思っていたので、動くことにびっくり。不意をつかれて、心臓がドキンとなった。長い眠りからさめた瞬間だったのだろうか?
その夜、表面がみるみる黒ずんできたので、死んで腐ってきたのかも…と心配になった、1匹目の羽化体験。
その後、次々と羽化が続いた。


羽化のタイミングは、すべて明け方。そして、蛹の薄皮を透かして蝶の羽が黒く見えてくるのは、どれも前夜になってからだった。


灰色だった表面が黒っぽくなり、その後、黒い羽の黄色模様がはっきり浮き上がってくる。


蛹の頭部が裂け、羽や触覚をおなか側にたたんでいた蝶が現れる。


殻から抜け出す直前に、茶色いおしっこをするので、すべての蛹の抜け殻は下部が茶色い。


しわくちゃの羽が次第に伸び広がってくる。外は大雨だからか、しばらく居て、存分に魅せてくれた。




すべてが飛び立った後のある日、アゲハが飛来する。うちで育ったアゲハが戻って来たのかな!?とささやかな期待。私の目の前で、庭の柚と山椒の葉に卵を産みつけて行った。生みたての瑞々しい卵がいくつも輝く。


自然はめぐる。命は引き継がれ、繰り返すのだ。