2012-01-01から1年間の記事一覧

一枚の絵「アゲハが見た世界」

今月前半、久しぶりに都心での個展を開催した。 その中からの1枚「アゲハが見た世界 1」。 アゲハの4枚の羽のうち、描写したのは1枚のみ。鑑賞者の位置をアゲハに接近させ、アゲハの眼をとおして世界を見下ろす視界をつくる。 その世界とは?例えば、もう…

蛹のとき 〜変わろうとする私たち人間を重ねて〜

春のある日、山椒の葉にアゲハの卵を見つけ、観察を始めたその生態は、驚きと不思議に満ちていました。変化に富む行程のなかでとりわけ不思議なのが、蝶になる直前の蛹の時期です。それまでとは打って変わって、死んだように無反応になる、ファラオの棺のよ…

しなやかにつよく

暗くて長い厳しい冬、周囲の大国に翻弄され続けた過酷な歴史 ー 森と湖とオーロラが美しく、穏やかな人々が住む国という印象からは想像できないほどの試練を、フィンランドの人々は乗り越えてきた。 私が出会ったフィンランド人は、潔い決断力とまっすぐな意…

アゲハの羽化、そして・・・

無反応の物体と化した蛹カプセルは、撫でてもつまんでも、何の反応もない。蛹になったばかりの頃の薄緑と黄色の美しい表面は、乾ききって灰色に変わり、糸で枝にひっかけた姿は、ぶらぶらと揺られたまま。生きている証もない。そんな蛹の期間は、予想よりも…

脱皮の不思議

1匹目の青虫では、勾玉型の前蛹から蛹へ脱皮する瞬間を目撃することができなかったので、2匹目からは、タイミングをとらえようと、わずかな変化を見守ることにした。タライの縁で前蛹化するしかなかった“苦労虫”は脱皮を迎える4匹目なので、それまでの経…

つぎつぎとアゲハの前蛹化

最初の青虫の蛹化は、初めての目撃だったせいか、すべてが新鮮で、驚きで、不安で…。そして、手がかかるほどかわいさが増す。子供のいない私にも、親心なるものを自覚するような体験だった。“やんちゃ青虫”の無鉄砲さに、他の4匹は、かすんで見えるただの青…

アゲハの成長に手を貸して

観察している中で最も大きく育ったアゲハの幼虫(青虫)が、いつになく激しい行動を見せ始めた。 葉を食べるでもなく、全速力で山椒の枝から枝へ渡り歩き、先端までたどり着くと虚空に半身を乗り出してぐるぐる動かし、宙に何かを探しているような動きだ。新…

アゲハを見守り中

5月半ば、柚の葉に産みつけられていた宝石のようなアゲハチョウの卵は、数日後には小さな黒い幼虫に変わっていた。最初はすすゴミのようだったのが、日増しに大きくなっていく。よーし、蝶になるまで見届けるぞ!と思っていたら、すべて姿を消した。鳥に捕…

足元の異変

ひと月程前、夫が緊張した面持ちでやって来て言った。「大変なことになっている…」 聞けば、棚から引っ張り出したファイルの書類がごっそりとぼろぼろになっていることに気づき、さらに棚自体も、そして棚の下の床もぼろぼろに…。も、もしや白蟻?! さっそ…

Pina Bauschの身振り

ピナ・バウシュの表現世界を表した2本の映像「夢の教室」と「踊り続けるいのち」を見た。2009年にこの世を去り、もう彼女の新作に会う機会は断たれてしまったけれど、生前の幾度かの公演を見続けて、なにかが私の感覚や意識の深いところに届いた瞬間をこれ…

文化活動を支える眼差し

1週間前の夕方、めずらしくファックス受信の音がした。紙面を見ると信じがたい文面がそこにあった。私の知人の中でも最もエネルギッシュな10人に入りそうな方、Nさんの訃報だった。 Nさんは、2003年から2006年にかけて私が実行委員会代表として企…

人格をもつ家

母の傘寿を身内でお祝いするため、福島に帰省した翌日、宮城県に向かった。これまで東北の被災地は何度か訪ねたが、まだ足を踏み入れていなかった石巻市から南三陸町までのエリアを訪ねてみた。震災から10ヶ月。幹線道路から見る市街地は、瓦礫が撤去され…