脱皮の不思議

1匹目の青虫では、勾玉型の前蛹から蛹へ脱皮する瞬間を目撃することができなかったので、2匹目からは、タイミングをとらえようと、わずかな変化を見守ることにした。

タライの縁で前蛹化するしかなかった“苦労虫”は脱皮を迎える4匹目なので、それまでの経験から、その兆候を捉えることができた。
前蛹になってから1日後、鮮やかな黄緑色だった表面が、黄色がかってくる。特に背中(下側)には、脱皮して現れる葉脈のような線が透けて見えている。(前の日記の最後の画像と比較参照)
脱皮後に現れる蛹の、バルタン星人のような頭部と“後頭部”のあたりの尖った角のようなものは、前蛹のどこに収まっているのだろう?眼を皿のようにして見届けようと思う。




“その時”が来て、それまでじっと動かなかった苦労虫くんがぴくぴくと動き始める。動くことによって、密着していた表面の皮と中の蛹が離れて隙間ができ、表面が微妙に白みがかっていく。まだ蛹の頭部が現れないうちから薄皮が肛門側にずれて行く。腹部(上側)に並んでいた足のなごりの白い円形を残して、縁取りしていた丸い輪郭線がずれていく…えっ!そういうことだったの?!まるで“イラストレータで作成した最上レイヤーの黒いデザイン画削除”の行程を見ているようだ。



後頭部あたりの皮をやぶり開いたのは、まだ尖っていない“角”だった。バルタン星人型の頭部は、口があったあたりに押し込まれていたらしく、寝癖のようにくしゃくしゃしている。



腹部側をよく見ると、触覚のような形がレリーフ状に見えている。脱皮したてで瑞々しい。



脱皮後の蛹は、みるみるうちに反り返り、乾くとかたちがシャープになる。これは別の蛹の脱皮後、時間が経った姿。



蛹が山椒の枝に付いた姿は、大きさも角度も、ちょうど山椒の葉と同じで、これも擬態なのだろう。
黒い幼虫の時には、鳥の糞に擬態して捕食されない工夫をし、青虫のときには、葉の重なりのデザインを身にまとい、動けない蛹になったら1枚の葉になりきる。反り身の形、山椒の葉の裏側の白っぽい緑色や葉脈のような模様まで、みごとに練り上げられたものだ。感心する。